第10回 【 一人歩きしてしまった桶谷式断乳 】

「○月○日に断乳したんですが、3日目に搾乳してもらうんですよね?」このような電話を頂くことが、よくあります。インターネット時代ですから、何事もインターネットで検索した内容を参考にしていらっしゃる方は少なくないようで、断乳も例外ではありません。多くの方が、ネット上で公開されている断乳のやり方を参考になさっていらっしゃるのではないでしょうか。それはある意味、当然と言えば当然のことでしょう。近隣に、乳房のケアを専門的に行える助産師がいれば、そこで指導なりケアを受けることが出来ます。が、そのような施設、あるいは専門の助産師がいなければ、自分なりに自力でどうにかしなければならない訳ですから、そうなると今の時代、頼るのはインターネットということになるのでしょう。

ただ、個人的に残念だなと思うことは、断乳のスケジュールは参考にされていますが、そもそもの意味を理解したうえで実行されている訳ではないという点です。母子双方の身体的・精神的な準備は整っているのでしょうか? 実際には、何の準備も整っておらず、思いつきで断乳なさったんだなと感じるケースが少なくありません。やってみたはいいが、おっぱいの状態の変化に驚き、手に負えずに駆け込まれる方もいらっしゃいますし、断乳したら、お子さんの夜泣きがひどくなってしまったということで、相談に来られた方もいらっしゃいました。

開業して間もない頃のことです。ご実家に帰省なさった時に、手助けしてもらえるからということで急遽断乳。お子さんの方は何とかなったものの、お母さんの方は発熱。いわゆる乳腺炎になってしまい、当母乳育児相談室をご利用くださった方がいらっしゃいました。よくよくお話を伺うと、3週間ほど前に乳腺炎になり、出産なさった産院で内服治療を受けたとの事でした。この度の断乳で、その時と同じ箇所に発赤・硬結が出現したようでした。通常桶谷式の断乳では、母子共に体調が良いときに行います。ご実家に帰省された時、乳房痛などはなかったかもしれませんが、断乳を実行しようとするには、ベストコンディションではなかったと思われます。つまり、断乳に向けての身体の準備が整っていなかったのです。授乳を再開し、乳腺炎の回復に努めて頂きたいとお願いしましたが、ご本人はこのまま断乳を継続したいという考えをお持ちでした。外科的治療も視野に入れながらの対応となりましたが、なんとか治めることができました。かなりヒヤヒヤしたことを憶えています。

『〜でなければいけない』というわけではありません。一つの考え方として捉えて頂ければいいかと思うのですが、断乳とは、「乳を断つ」ということですから、それなりに母子双方の時期を見極めることが大切ではないかなと思います。様々なライフスタイルの中で、いろんなご事情を抱えていらっしゃるでしょうから、思い通りにいくことばかりではありませんが、時期を見極め、お互いの心と身体の準備という点に、もう少し意識を向けて頂ければ嬉しいなと思います。

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