第3回 【 夫の理解と協力 】

Sさんとの出会いは、2003年の秋。低出生体重児だったお子さんより一足早く退院したSさん。一生懸命搾乳を続け、その甲斐あって母乳分泌は順調となり、お子さんも1ヶ月ほどで退院出来ることになりました。ようやく赤ちゃんに直接授乳が出来るようになったわけですが、なかなか吸い付いてくれず、そうこうしているうちに左の乳房がガチガチに張ってしまい、知人の紹介で相談室へやって来たのが始まりでした。

Sさんのおっぱいはトラブルが多く、最初の頃はよく詰まってしこりが出来ました。白斑にも悩まされたものです。「良くなったと思えば、また詰まる。もう辛いから止めたい。」そう言われた時、彼女の辛さを知っているだけに、ミルクより母乳の方がどんなに良くても、“頑張って続けて”と励ますことはとても出来ませんでした。「止めたければ、いつでも止められるから。」私が言えたのは、こんな薄っぺらな言葉だけだったように思います。ある日、また乳房の痛みに顔を歪めているSさんに対し、ご主人がこんなことを仰ったそうです。「それでもおまえは頑張りたいんだろう。おっぱいを続けたいんだろう。だったら、俺の出来ることは何でも協力するから、出来る所まで頑張ってみたら!」 Sさんからこのお話を伺った時思わず涙が込み上げてきて、一緒に泣いてしまいました。Sさんのみならず、私もご主人の言葉に救われたように思います。

Sさんはご主人の理解と協力があり、2005年の春に無事に断乳なさいました。良いことばかりではありませんでしたが、母乳育児をやり遂げたSさんの表情は清々しく晴々としていて、なんだか“母は強し”のイメージにピッタリでした。

夫の育児参加とは、ミルクを与えたりおむつ換えだけではないと思います。子育てについて夫婦で話し合い、お互いの考えを理解し尊重し合うことも大切だと思います。自分が出来ること、役割を果すべくベストを尽くす。それもありだと思います。お父さんの言葉掛け一つで、お母さんの心は晴れたり曇ったりするものです。世のお父さん方、お母さんのことも見てあげてくださいね。

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